中国語で「~できる」(英語のcan)の意味の代表格である以下の3語。
「能」【néng】、「会」【huì】、「可以」【kěyǐ】。
このページでは、中国語の ❝「できる」3大注意事項!❞ とも呼ぶべき、この3語の使い分けについて、初級レベルの内容を解説します。
「~できる」という言い方をマスターすれば、「中国語が話せる」を中国語で表現でき、「~してもいいですか」や「~してみれば?」などの言い方も身に付けられます。
英語でいえば、
❝ can ❞ や ❝ be able to ❞ が使えるようになるのと同じです。
❝ I play tennis.❞ を → ❝ I can play tennis.❞ と言い換えられるように、1つ進歩できます!
ただ、この3語、使い分けが必要です。
意味が似ており、実際3語のうち2語は、交換可能な場合がよくあり、注意が必要です。
まずは、ウォーミング・アップに次の問題を解いてみてください。
問.「あなたは中国語が話せる」を中国語の文にした場合、どれが正しいか。
- 你能说汉语。
【Nǐ néng shuō Hànyǔ】 - 你会说汉语。
【Nǐ huì shuō Hànyǔ】 - 你可以说汉语。
【Nǐ kěyǐ shuō Hànyǔ】
選択肢1~3の違いは、❝ 能 ❞ と ❝ 会 ❞ と ❝ 可以 ❞ の部分だけです。
正解は...
1~3のすべて
です。
え? 「2」だけが正解じゃないの?と、思われた方。確かにどの参考書にも「中国語ができる」とか「中国語を話せる」は「会」を使うと載っています。そして、中国人が使うのも圧倒的に「会」が多いです。しかし、“你能说汉语” が間違いというのも誤った認識です。「会」がよく使われているので、「能」は間違いと誤解している方もいるようですが、文法的には全く問題ありませんし、中国人も時々口にします。
「2」が普通正解とか言うのも知らなかったという方は、まず「2」の表現が基本なので、知っておいてください。
「会」は、「勉強して習得した、できるようになった」というイメージを持つ語です。一方、「能」は「能力を持っている」というイメージが中心です。背後に持つイメージが異なる2語ですが、「中国語ができる」という意味だけなら、“你能说汉语”=“你会说汉语” です。「能」と「会」は、「初めて動作や技能を身に付けた時、~できる」という意味でどちらも用いることができる語なので、「能」の文と「会」の文はよく書き換え可能です。ただ、例えば、出身地や生育環境の関係で、中国語ができないかと思いきや、子供の頃から勉強しなくても自然に「中国語ができる」という場合は、「能」を使っても、「会」は使わないなど、細かいケースの違いは色々とありますが。
尚、「3」も意味は少し違いますが(していいよ、という意味など)、正解になります。
目次
初級・ポイント①
3語はすべて「能願動詞」
「能」【néng】、「会」【huì】、「可以」【kěyǐ】の3語は全ての能願動詞といいます。
能願動詞とは、中国語の助動詞です(実際、助動詞と記載される場合もあります)。英語の ❝ can ❞ も助動詞です。
初級・ポイント②
3語の「イメージのちがい」をつかむ!
3語はそれぞれが持つニュアンスや意味が微妙に異なります。
👉 3語の区別、使い分けのポイントは、
それぞれの持つ「イメージ」を押さえること
です。さらに
3語それぞれ独自の用法がある
ので、それも紹介します。いずれも、中国語初級者が押さえておきたい基本的な用法になります。
1語づつ順に、押さえていきましょう。
初級・ポイント③ 【会】
“会”のイメージは「学習して、できる」「体得して、できる」
+「可能性」(独自用法)
1番手は、先ほどの ウォーミングアップの問題(勉強して習得した、できるようになった、という意味での「中国語が話せる」という表現)でも少し説明した “ 会 ” 【huì】。まずは、「~できる」という意味で、“ 能 ”、“ 可以 ”との区別から見ていきましょう。
①【習得・体得】の“会”
【習得】の“会” :(技能を学習し、覚えて)「できる」
👉 “ 会 ” のイメージは、「習得」(修得)
学校・教室で、学習・訓練・練習などにより、「できるようになった」
です。これを「習得」の “会” などと呼びます(「技能」の “会”、「能力」の “会” などとも)。
例 他会弹钢琴。 彼はピアノが弾ける(=弾くことができる)。
【Tā huì tán gāngqín】
少し練習したり、手ほどきをしてもらえば、基本的には誰でもできるようになることに使います。
その為、もしあなたの中国語が初級レベルだとしても、カタコトで2、3フレーズ話ができれば、中国人は “ 你会说中文! ”(中国語話せるんだ!)と言います。自分が大したことないと思っている人にとっては、「こんな実力で褒めないでほしい」と恥ずかしい思いをしたり、「この程度で褒めるなんて」と色々な思いが自分の中で巡ってしまいそうですが、これは中国語の性格の問題です。
“会” はあくまで基本的にできるようになることを表します。その上で、具体的に能力がどの程度か表すのは、“ 能 ” を用います。
基本的にという点、テクニックやコツを習得するという2点を押さえてください。
「上手い、長けている」という意味の “ 会 ”
先ほど説明した “会” とは別に、「上手い、長けている」という意味の “ 会 ” の用法もあります。この場合は、「基本的にできる」という意味ではなく、「上手だ」という意味です。紛らわしいですね。
例 他很会弹钢琴。 彼はピアノが上手い。
【Tā hěn huì tán gāngqín】
“ 会 ” の前によく “ 很 ”【hěn】、“ 真 ”【zhēn】、“ 最 ”【zuì】が使われるのが特徴です(必ずあるとは限りません)。或いは文脈、語気などから判断します。
動詞で「できる」という意味の “ 会 ”
今度は再び「~が(を)できる」(「基本的にできる」)という意味の “ 会 ” です。但し、能願動詞(助動詞)ではなく、ここで紹介するのは動詞の “ 会 ” です。
例 你会汉语。 あなたは中国語ができる。
【Nǐ huì Hànyǔ】
“ 会 ” 自身が動詞になっているので、“ 会 ” の後ろに他の動詞は来ません。
“ 你会说汉语 ” も “ 你会汉语 ” もどちらも正解で、どちらも同じ意味です。
【体得】の“会” :(体得・会得して)「できる」
①の「習得」の “ 会 ” の拡張用法、派生用法とも言える用法です。
「子供が歩ける」、「箸でごはんが食べられる」などを、“ 会 ” を使って表します。これは、語学その他と同じく、人間が(動物も)、生まれつき持っている潜在能力が、学習により開花してできるということを表す “ 会 ” の特徴から来ています。
また、お酒が飲める(飲めない)、タバコが吸える(吸えない)なども、“ 会 ” で表し、「体得」の “ 会 ” の用法です。中国人は、酒やたばこも技能の一つと捉えています。そのため、“ 会 ” を使います。
例 孩子会走路了。 あなたは中国語ができる。
【Háizi huì zǒulù le】
では、次に “会” の「独自用法」を見てみましょう。
②【可能性】の“会”:(可能性があることを表して)
「するだろう」「するはずだ」
独自用法とはいえ、実際には “ 能 ” にもこの用法はあります。今回の「初級レベル編」においては、“ 会 ”のみ「可能性」用法を紹介する関係で、“独自用法” 扱いとしました( “ 能 ” の「可能性」用法は、“ 会 ” と少し異なり、説明が複雑になるので、別のページで扱う予定です)。
👉 “ 会 ” のイメージは、 あることが起こり得る
です。ある事(=1つの事)が起こる可能性があることを表します。「できる」という意味とはだいぶ違いますが、よく使われる “ 会 ” の重要な用法です。
例 今天会下雨。 今日は雨が降るだろう。
【Jīntiān huì xià yǔ】
初級・ポイント④ 【能】
“能”のイメージは「能力/条件/許可があってできる」(=3つの用法)
2番手は、“ 能 ”【néng】。“ 能 ” は初級レベルでは、3つの用法を押さえておきたいところです。この3つは、暗記する必要はありません。出てきた時に訳せれば良いので、見慣れておくことを意識してください。 3つの用法のうち、1つ目は、 先ほど “ 会 ” のところで比較した “ 能 ” です。2つ目と3つ目は “ 可以 ” と交換可能な用法です。
①【能力】の“能” :(能力があって)「できる」
能力があり、ある事を実現できる、というイメージ・ニュアンスを持つのが「能」。
例 我们能完成任务 。 私たちは任務をやり遂げることができる。
【Wǒmen néng wánchéng rènwù】
このページの前半のクイズの解説のところでも、説明しましたが、
“ 能 ” と “ 会 ” の文はよく書き換え可能
です。しかし、同じ「できる」でも、
“ 会 ” は「(学習を通じて)修得していること」、
“ 能 ” は「能力があること」
にそれぞれ意識のフォーカスが向きます(=両者のイメージ、ニュアンスのちがいがあります)。その為、
書き換え可能な場合と不可能な場合がある
のが実情です。
“ 能 ”=“ 会 ” の場合
初めて動作や技能を身に付けた場合は、“ 能 ”と“ 会 ” のどちらも用いることができます。「学習を通じてできるようになった」という点が意識された場合(またはそれを前提と言い方をするなら)、“ 会 ”を使いますが、単に「できる」という意味にフォーカスするなら、“ 能 ” の使用が可能です。つまり、両者は微妙にニュアンスや前提が異なるものの、多くの場合において交換が可能です。(但し、実際には “ 会 ” の方が多く用いられます。)
例 你能说汉语。 あなたは中国語が話せる。
【Nǐ néng shuō Hànyǔ】
= 你会说汉语。
【Nǐ huì shuō Hànyǔ】
前半のクイズの例文です。目の前の人が「中国語が話せる」ことだけに意識して表現する場合、“ 能 ” を使った言い方も可能です。「学習してできるようになった」ことが意識されるなら “ 会 ” を使うことになりますが、現実には意識されない場合や、どちらでも良い場合が多いと思います。だから、多くの場合で “ 能 ”=“ 会 ” となります。実際、目の前の人が「中国語ができる能力を備えている」ことを意識して、「(あなたは/彼は)中国語ができる」「中国語話せるんでしょう?」というような場面は多々あると思います。その時、“ 能 ” を使います。いちいち「勉強して中国語できるようになった」という言い方である “ 会 ” を使う必要がない場面も多々あるということです。また、誰でも語学は「勉強して習得するもの」と思いきや、そうでない人たちもいます。出身地や生育環境の影響で、勉強しなくても「中国語ができる」という人もいます。そのような人たちの場合、勉強して習得する意味の “ 会 ” は使いません。 “ 能 ” を使うのが正しい、ということになります。
“ 能 ”≠“ 会 ” のパターン(書き換え不可のパターン)
“ 会 ” が「基本的にできるようになること」(または「上手い、長けている」)を表すのに対して、
“ 能 ” は「その上に立って具体的に能力がどの程度か」を表します。
この場合、“ 会 ” と “ 能 ” は書き換えできません。この用法の場合、“ 能 ” は、具体的な語句や数値をよく伴います。
例① 他能游五百米。 彼は500メートル泳げる。
【Tā néng yóu wǔbǎi mǐ】
例② 他能看中文报。 彼は中国語の新聞が読める。
【Tā néng kàn Zhōngwén bào】
上の①の例文の場合、「水泳ができる」「泳げる」だけなら、“ 会 ” でも “ 能 ” でも良いですが、「500メートル泳げる」のような具体的内容を言い表す場合は “ 能 ” を用います。
②の例文の場合も、「中国語ができる」だけなら、“ 会 ” でも “ 能 ” でも良いですが、「中国語の新聞が読める」のような具体的内容を言い表す場合は “ 能 ” を用います。
👉 具体的能力を表現する場合には、“ 能 ” を用いる
※ 「500メートル」のように、数字が入ると “ 能 ” を用いることが多くなります(具体的内容になるため)。
②【条件】の“能” :
(客観的な条件・事情のもとで)「できる」
②と次の③は、“ 可以 ”【kěyǐ】と意味が近い用法になり、どちらもほとんどの場合、“ 可以 ” と書き換え可能です。
この②の「条件」の “ 能 ” は、同じ「できる」という訳でも、色々な外界の条件が整い、 広い意味で「できる」ということを表します。
👉「時間があって」とか「許可が下りて」とか「体力的に」とか、色々な客観的な条件・事情が許し、
「できる」
例 你明天能参加舞会吗? あなたは明日ダンスパーティーに参加できるか。
【Nǐ míngtiān néng cānjiā wǔhuì ma】
= 你明天可以参加舞会吗?
【Nǐ míngtiān kěyǐ cānjiā wǔhuì ma】
「パーティーに参加できる」というのは、能力どうこうの話ではありません。特に用事もなく、病気もしていない、出席を妨げるものはない等の客観的な条件・事情が整っていて(=それらが許して)、差しつかえなく「できる」という意味です。これが【条件】の “ 能 ” です。
③【許可】の“能”:
(許可されて/許されて)「できる」、「~して良い」
客観的に見て許されることを表します(情理上や環境上、許されることも)。その為、訳は、「できる」以外にも、
- ~して(も)良い
- ~することが許される
- (否定文で)~してはいけない、~であってはならない、~するわけにはいかない
- (疑問文で)~して良いですか
などと訳します。この用法は、疑問文、否定文で多く用いられます。
また②と同じく、ほとんどの場合、 “ 能 ” を “ 可以 ” と交換可能です。
例 这儿能吸烟。 ここはタバコを吸ってもかまわない(タバコを吸って良い)。
【Zhèr néng xī yān】
= 这儿可以吸烟。
【Zhèr kěyǐ xī yān】
初級・ポイント⑤ 【可以】
“可以”のイメージは、
(状況・条件が許して、“控えめな” )「できる」
+「勧誘」(独自用法)
最後3番手は、“ 可以 ”【kěyǐ】。
“可以” は元々「(状況や条件的に)~するのに差し支えはない、~するのに支障はない」という消極的な可能を表すところから、そのニュアンスが生まれました。その為、「~しても構わない」、「~しても大丈夫だろう」のような消極的な「できる」の意味を表します。(例:「たばこを吸うのに差しつかえない」→「たばこを吸っても構わない」“ 你可以吸烟。” )。積極性や強さがなく、“控えめな”「できる」のイメージです。
“ 可以 ” は初級レベルでは、3つの用法を押さえておきたいところです。それらを暗記する必要はありません。出てきた時に訳せれば良いので、見慣れておくことを意識してください(説明や例文を読んで、内容や意味を理解でき、自分の中で腑に落ちればOKです👌)。
①【条件】の“可以”:
(外的状況・条件が許し)「できる」
例:这间屋子可以住六个人 この部屋には6人泊まれる。
【Zhè jiān wūzi kěyǐ zhù liù gè rén】
訳し方の例です。
- ~できる、~することができる
- ~れる、~られる
- ~し得る
外的状況・条件が許し、可能である、実現できることを表す用法で、 “ 能 ” の②【条件】の用法とだいたい同じで、ほとんどの場合、“ 可以 ” を “ 能 ” と 書き換え可能です。
👉 否定形は不能を用います。(※ “ 不可以 ” は用いません)
②【許可】の“可以”:
(許可されて/許されて)「できる」「~して良い」
例:我可以走了吗? 帰ってよろしいですか。
【Wǒ kěyǐ zǒu le ma】
訳し方の例です。「~(することが)できる」と訳すよりも、それ以外の訳し方をするケースが多いです。
- ~して(も)良い
- ~してよろしい、(否定文で)~してはいけない
- ~したらどうです
- ~しなさい
人為的な “客観的ルール” を意識した用法で、誰か “許可する者” がいたり、定められたルール・規則・法律などの存在を意識した上で、「できる」という意味を表します。また、“客観的ルール” とは少し違う形で 「できる」という意味を表す場合もあります。「できる」というよりは、「~しても良い、~しても差し支えない」というニュアンスです。
“ 能 ” の③【許可】の用法とだいたい同じで、ほとんどの場合、“ 可以 ” を “ 能 ” と 書き換え可能です。
👉 否定形は “ 不能 ”【Bù néng】と “ 不可以 ”【Bù kěyǐ】のどちらも用います。
👉 返事にはよく “ 不行 ”【Bù xíng】、“ 不成 ”【Bù chéng】(共に「いけない」、「だめ」の意味)を用います。
③【勧誘】の “可以”:
(人に “控えめに” 勧める意味で)「できる」「~してみたら(いい)」
例: 这本书可以看看。 この本を読んでみたら。
【Zhè běn shū kěyǐ kànkan】
訳し方の例です。この用法も「~(することが)できる」と訳すよりも、それ以外の訳し方をするケースが多いです。
- ~してみたら、~してみたらいい、~したらよい
- ~する価値がある(値打ちがある)
- ~になる
- なかなかいい
- (否定分で)~する価値がない、~するに値しない
人にあることをするよう勧める用法ですが、強く推薦するわけではなく、どちらかというと “控えめに”、“引いた感じ” で勧めるニュアンスです。あっさりと軽く、気楽に「~してみたら(いいよ)」、「~してみたら(どうだろう)」、「やってみたら」という感じ。「(自分は相手が)~するのを妨げない」と、相手の自由裁量に任せる、といったニュアンスを含む場合もあります。
“ 会 ” と “ 能 ” には無い “ 可以 ” の独自用法です。
否定は
👉 否定形は “ 不值得 ”【Bù zhíde】
特徴ある否定形ですね。
まとめ
如何でしたか。『能』『会』『可以』の使い分けの学習は、つい後回しにしてしまいがちですが、 ぜひどこかで時間を取って、一度しっかり確認・整理しておくことをお勧めします。このページが何らかのお役に立てれば幸いです。
「~できる」3大注意事項!『能』『会』『可以』の使い分け
初級レベルのポイント
1.3語はすべて「能願動詞」(助動詞)
2.3語のイメージのちがいをつかむこと
3.“ 会 ” のイメージは「学習して、できる」「体得して、できる」+「可能性」(独自用法)
4.“ 能 ” のイメージは「能力/条件/許可があってできる」(=3つの用法)
5. “可以”のイメージは「(状況・条件、客観的ルールが許して、“控えめな” )「できる」+「勧誘」(独自用法)