「補語」—  中国語文法・中級者、最大の牙城、最大の関門 <全体論・編>

「見た」を中国語になおすと「看了」

のはずなのに、

中国人の口から出てくるのは、「看懂了」、「看过」、「看完」などなど...

たいてい「看了」以外を使う時の方が多い。

なかなか「見た」と言うシーンで 「看了」とシンプルに言ってくれない。

日本語の「見た」と同じぐらい頻繁に中国人も「看了」と言ってくれたり、私たち日本人も「見た」と言いたい時に「看了」と気軽に口にできれば、もっとずっと中国語が楽なのに(その点だけでも)...

「いや、何を言ってるんですか。 『看过』は『見たことがある』、『看完』は『見終わる』。普通じゃないですか。日本語と同じですよ。必要だから使いわけが生じているだけですよ」とおっしゃる方、そんなあなたは、もうどっぷり中国語の感覚に浸かっていて良いのかもしれない。

しかし、よく観察してみると、実際日本語で「見た」と言う場面で中国語では、中国語では「看了」にならず、「看」の後ろに先程の色々な語が付くパターンが多いことがわかる。

このページでは、この「看」と、 「看懂了」「看过」「看完」 の例のように、動詞の後ろに付いて「意味を補う」語について解説します。

「~懂了」「~过」「~完」などの語を、

補語

と言います。

(「了」はアスペクト助詞で補語ではありません )。

恐らく、中級レベルの文法では、「最大の難関」「最大のヤマ場」の1つと言えると思います🏔

「ごめんなさい」「すみません」と中国人があまり言わないのを知る(場合によっては、自分も言わなくなる)のが初級なら、さしずめ中級は、この「过」とか「完」など補語の意味の違いを理解していることと言っても良いかもしれません(場合によっては、自分で使い分けも可能であること)。

「过」や「完」は、それぞれ「~することができる」、「~し終わる」というわかりやすい日本語の訳を持つので、付けた場合と付けない場合、どの語を付けたかによる区別は、しやすいかもしれませんが、

では「买」の後ろに補語が付いた「买得起」「买不起」「买得到」「买不到」を正しく区別できるでしょうか(全て意味が違います)。

このページでは、補語の全体的な概要、紹介を解説します。

英語に理解のある方は、英語の補語と中国語の補語は違うということを、
そしてご覧いただいている全ての方が、中国語の補語はどのような語か、
ということを理解して頂ければと思います。

全体的な解説をします(個々の補語の解説はまた別の機会に)。

目次

● 英語の補語

【 ※ 英語に興味がない方は、次の「● 補語」からお読みください。
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英語の補語は、Cという文字で表され、

① SVC(第2文型) ※S=C  例 I am a student. 私は学生です。(I= a student)

② SVOC(第5文型) ※O=C  例 They called him Jim. 彼らは彼のことをジムと呼んだ。(him=Jim)

で使われ、「SV(主語+動詞)」、「SVO(主語+動詞+目的語)」だけでは意味が不完全な場合に補われる語句のことを言います。

【※参考】文法の名称の定義は言語によって異なります。同じ「補語」という名称でも、その定義は、各言語によって異なるのです。英語には5要素(主語〈S〉、動詞〈V、=述語〉、目的語〈O〉、補語〈C〉、修飾語〈M〉)、つまり計5つ(ないしは接続詞を含めて計6つ)の要素がありますが、中国語には7つの要素があります(主語、述語、目的語、定語〈連体修飾語、状況語〈連用修飾語〉、補語)。名称が共通しているものについては、定義や中身も同じだろうと考えてしまいそうですが、実際はそうではないのです。これは品詞についても同じことが言えます。

● 補語 ~中国語文法・中級者の奥義

述語の動詞や述語の形容詞のあとに置かれ、述語の動作、行為、状態、性質について、詳しく補足説明をします(補足する語だから補語)。単純に動詞、形容詞だけの場合よりも、表現の幅が広がります。中国語は動詞の活用(動詞の形の変化)はありませんが、代わりにこの補語が多用され、様々な表現を可能にしています。具体例を、補語の5つの種類別に見てみましょう。

● 5種類の補語

① 完、错、饱など  例:吃饱了。(結果補語)

※結果補語には動詞が使われるので、見た目は「動詞+動詞」の形になります。
⦅例文の拼音と訳 Chī bǎo le お腹いっぱいになりました。⦆

② 来、去、上、下、出、回など   例:他回办公室去了。(方向補語)

※少し複雑な補語です(詳しい説明はまた別の機会に)。
⦅例文の拼音と訳 huí bàngōngshì qù le 彼はオフィスに戻りました。⦆

③ 来、懂、到など   例:今天晚上你回得来吗?(可能補語)

※構造助詞「得」と結果補語または方向補語を使って作られます。肯定文なら、❝動詞+得+結果補語または方向補語❞の形。否定文なら、❝動詞+不+結果補語または方向補語❞の形。
※少し複雑な補語(詳しい説明はまた別の機会に)。
⦅例文の拼音と訳 wǎnshang nǐ huídelái ma 今晩あなたは帰って来られますか。⦆

④ 早、很好、很流利、好极了など  例:他说汉语说得很流利。 (様態補語)

※様態補語の前に構造助詞「得」を付けます。
⦅例文の拼音と訳 Hànyǔ shuōde hěn liúlì 彼は中国語を話すのが流暢です。⦆
※状態補語、程度補語とも言います。

⑤ 五天、八个小时、四年など   例:我们学汉语学了四年。 (数量補語)

※数量補語とは、時間や回数を表す語句。
⦅例文の拼音と訳 Wǒmen xué Hànyǔ xuéle sì nián 私たちは4年間中国語を学びました。⦆
※動詞の後に目的語がくるときには、その動詞を繰り返し、数量補語をその後に置きます。

● 5種類の補語の難易度順

数量補語⑤ < 様態補語④ < 結果補語① < 方向補語② < 可能補語③

※番号は上記の通し番号

難易度は上記のような順序になるのではないか、と個人的には思います。特に、結果・可能・方向の3補語は「中国語表現の要」と言われる時もあります。最終的には、「どの種類の補語か」、ではなく、1つ1つの表現が、

「日本語の言い回しに近ければ簡単だし、遠ければ難しい」、それに尽きます。

例 那封信我已经写好了。その手紙を私はもう書き終えました。

結果補語の例文ですが(「好」が補語)、恐らくたいていの人が訳すのには問題ない(あるいは、すぐ慣れる)と思いますが、「自分が使いこなす」(=日本語→中国語)となると、パッと使いこなせる人は数がずっと減るのではないかと思います。

「書き終える」というと、もう1つ「写完了」という日本人の私たちが使いやすい言い方がありますが、「写完了」 と「写好了」の違いを理解して使い分けるとなると、やはりできる人は限られてくるのではないかと思います。

まあ、訳すことができて、聞き取れればたいてい困ることはないはずですが、難易度が上から3番目の結果補語にもこのような表現もあることをご紹介させて頂きました

。方向補語と結果補語、特に可能補語は圧倒的に数が多いので、区別が難しいです。補語のほとんどはその字を見れば意味がわかるものばかりなので、あとは覚えるばかりですが、中には字を見ても、訳を知っても、意味がわからなかったり、2つの語の意味のちがい・区別がわかりにくものもあります。

まとめ

いかがでしょうか。今回は、補語について、全体的なイメージをつかんで頂くための単なる紹介でしたが、補語がどのようなものか少しご理解いただけたでしょうか。補語は確かに、複雑で、中には、日本語には明確な区別のない部分に2つの意味の違う言葉が存在し、その使い分けが求められたりするものもあります。その点、初級の文法にはない難しさもあります。ただ、これを使いこなせれば、表現の幅がうんと広がります。「中級レベルの文法は、補語の習得が1つの柱・ポイント」という点をぜひ押さえて頂ければ、と思います。更には、

👉 動詞 + 得 + 補語(否定形は動詞+不+補語)

の形を1つ、たくさんある中の1つに過ぎませんが、覚えて頂いて、「中国語の補語とは何?」と自分で疑問に思ったり、人に聞かれたら、この「公式」なり、「得」の後ろに置いたりするもの、なりを思い出して頂ければ、と思います。